● 章立て

0)はじめに
1)全体的なお話
2)アナスタシアとLOVE LAIKA
3)渋谷凛
4)New Generation
5)美城常務とProject Krone
6)まとめ


0)はじめに
二期も折り返しを迎えるシンデレラガールズ、今回は秋フェスに向けて激震走る346が舞台となりました。
これまでNG外のゲストアイドルに影響を及ぼしていた常務が、直接的に主人公に食指を伸ばしてきたり、複数のメインアクターが同時に話を進行させたり、色々と潮目が変わるお話でした。
これまで20話蓄積してきた演出をリフレインし、『点』の描写を結んで『線』の演出を、『線』の演出を組み合わせて『面』の物語を想起させるシーンも非常に多く、物語的財産をリッチに使った回だと言えます。
今回は各アクターごとのストーリーを追いかけつつ、お話の全体像を組み上げてみようかと思います。


1)全体的なお話
今回のお話は、二期共通のフォーマットを形式面では大きく離れつつ、物語的目的としては同じ傾向を持っている、かなり特殊なお話だと思います。
前回(http://lastbreath.hatenablog.com/entry/2015/08/26/231012)書いた二期の基本フォーマットをもう一度書いておくと、
1 交流
CP個人の物語は一度展開しているので、CP外のアイドルとの接触を物語の軸にする
2 対立
常務がかけてくる圧力とそれへの対抗策が提示される
3 深化
過去のユニット回で扱ったテーマの変奏を行い、別角度から光を当ててキャラクターの人格を掘り下げる
というものになります。

このフォーマットに従って第20話を考えると、
1 交流:渋谷凛と神谷奈緒・北条加蓮、アナスタシアと鷺沢文香・大槻唯
2 対立:秋フェスにCPを強引に引っ張り込み、メンバーの引き抜きも行う常務
3 深化:新田美波に守られてきたLOVE LAIKAを離れて新しい可能性に挑むアナスタシア、トライアドプリムスで初めて自分がやりたいことを見つけた渋谷凛
という感じになります。

第19話がフォーマットを形式・内容共にきっちり守り、*の繋がりを維持しつつ発展させていくお話だったのに対し、第20話は様々な意味でフォーマットを逸脱しつつ、常務からの圧力によって物語が回転し、アイドルの世界が拡大していく二期の内容を、丁寧に膨らませたお話だと言えるでしょう。

今回起きた事件は、これまでの6話の傾向・共通点からかなり変化しており、非常に新しい印象を受けます。
例えば常務の圧力がゲスト・アイドルではなく、CPメンバーに直接ぶつかってきたこと。
一期で到達したユニットやキャラクター性に(別角度から切り込んで批判も加えつつ)帰還するのではなく、手に入れたものを一旦解体することに価値を認め、大きな変化を起こしたこと。
一話で問題点の発掘から解消まで終わらせるのではなく、本田未央のソロ宣言という爆弾を起爆し次週に引いたこと。
二期が始まってから共通していた形式をかなり逸脱し、変化を強調する流れだったと言えます。

同時に、変化の根底にあるのはこれまでのお話と同じく美城常務からの圧力であり、CP外部のアイドルとの交流です。
一期で獲得した暖かい場所を批評的に再検討し、新しい価値を見つけていくという姿勢も、第14話からずっと続くスタンスそのものです。
出来事やキャラクターたちの動きという『外側』は大きく変化していますが、それを導くテーマや価値という『内側』には変化がない、という事ができるかもしれません。


お話自体は、アーニャと凛ちゃんが常務の起こした変化の只中に放り込まれ、悩みつつも新しい出会いに心を動かされ、新たなる挑戦に飛び込んでいくお話です。
いわば、秋フェス準備LOVE LAIKA編と、New Generation編が並列して進行するお話であり、第18話以外は軸を一本に絞って展開してきた二期のなかでも、かなり例外的なお話だと言えます。(第18話はかな子&智恵理軸と杏&きらり軸の二本軸構成)
比較的円満に先に進んだLLと、大揉めに揉めた結果未央がソロデビューを決断したNGという対比的な見せ方は、初ライブの成否明暗が綺麗に別れた第6話を思い出す構成です。

あの時と同じように、本田が泣きダッシュして次回へのブリッジがかかっている……と言いたい所なんですが、未熟なアイドル未満がなんとかアイドル見習いになる一期と、もうアイドル見習いとは言ってられないピンチが襲いかかってくる二期では、当然様々なことが異なります。
同じシチュエーションを繰り返すことは共通点を強調すると同時に、時間的変化や成長といった差異も強調する。
前は駆け下りていた階段を駆け上がり、プロデューサーとも即座に話し合った本田さんだけではなく、今回は過去エピソードからの引用、そしてそれが生み出す差異と合同の反復が、様々な場所に埋め込まれています。
これまで貯めこんできた物語的貯蓄を有効活用する、勝負エピソードらしいリフレインが今回の演出には響きわたっていました。

差異と合同の反復という意味では、常務の描かれ方もグッと踏み込んだものに変わりました。
露骨にCPのネガ(何しろ衣装が黒で統一されてるわかり易さ)であるプロジェクトクローネがお目見えし、彼女が持っている力と理念に、具体的な顔と名前がついた。
それだけではなく、群像主人公であるCPに直接影響力を及ぼしたことで、これまで強調されてきた敵対関係だけではなく、常務が持っている正当性に思いを馳せなければいけない味方の立場に、物語的な足場が変化しました。
こうすることで常務は、その行動や理念に容易には共感出来ないが、しかしただ否定することも出来ない、多角的で面白い存在に変わりました。
『悪すぎず、強すぎず』の中途半端とも言えるこれまでの描き方が、複雑さに意味合いを変えてくる回としても、今回は重要ではないでしょうか。
様々な変化と類似が埋め込まれた今回のお話ですが、メインアクターのお話を追いかけながら、物語に内在する要素を考えていきたいと思います。

 

1)アナスタシアとLOVE LAIKA
では、最初にアナスタシアの物語を見ていきます。
今回アナスタシアはKP参加を打診され、戸惑う中で鷺沢文香・大槻唯と出会い、プロデューサーの助言を受けつつも一人で考え、最終的にKP参加を決めます。
年長者である新田美波の庇護下にあって、そこまで自分を出さなかったアーニャが、自分の意志で『新しい経験』経験に飛び込んでいくこと。
アイドルを始めるという『新しい経験』を選びとった新田さんと、同じ場所に立つためにあえて手を離す選択をすることが、アーニャが今回体験する物語です。


お話の最初に、キレイで目元が涼しい女の子が三度の飯より好きな常務に呼び出されたアーニャは、凛ちゃんと一緒に、KPへの自由参加を迫られます。
『自由参加』というのがミソで、参加すれば常務が正しいと思うアイドルの線路に乗っかってもらうが、参加すること自体はアイドルが決めなければいけません。
第15話の楓さん、第19話の夏樹を考えると、『目をつけたアイドルを扉の前に立たせて、開けるか閉じるは自由にさせる。開けたら囲い込み、閉じて去るなら追わない』というのが、常務の基本方針なのでしょう。
そして新田さんはKPには呼ばれていないので、第6話の初ライブのように、震えた時に手を握ってくれる相手はいません。
参加するのであれば、アーニャは一人で新しい海に漕ぎ出さねばならないわけです。

プロデューサーは過剰な正しさを振り回し、自分の思うようにアイドルを導いた結果崩壊させてしまった過去をもっています。
常務が彼の過去を知っているかはさておき、『自由参加』を盾に横車を押していく交渉戦術は、プロデューサーにとっては痛い所を突かれる形です。
結果、KP参加の拒絶しきれず、アーニャは混乱の渦中に放り込まれることになる。
常務の言うとおり、プロジェクト参加は二人にとって悪いことではないのですが、この段階だとCPにとって常務の申し出は敵の宣戦布告なので、全体的なトーンが暗い。
常務の部屋がブラインドを落としきって光を入れていない辺り、デレアニ(というか高尾統子)演出だなぁと思います。


本丸である地下プロジェクト室に帰ってきても、アーニャは迷ったままです。
ユニットの戦友である新田さんに切り出すこともなく、アドレス帳を呼び出しては消し、信号の変化にも気づかないくらい悩み続けている。
それは多分、常務の提案がアーニャにとって魅力的だからです。
好戦的な雰囲気でまとまったCPから浮いた感じになっているのも、『敵』である常務が見せてくれた可能性を試してみたいという気持ちが、この段階で生まれてきているから。
しかしそれは未知の恐怖でもあるし、『敵』への寝返りでもあるし、新田さんとの一時的離別でもある。
アーニャの心中は複雑で、穏やかではありません。

そういう視線が下に向かわず、看板を見上げる方向に行くのは、20話分の蓄積を感じさせて面白いところです。
このアニメはアイドルの広告で埋め尽くされた世界で、一話冒頭からして『今は顔も名前もない少女たちが、未来の自分たちであるアイドルに埋め尽くされた世界に立ち尽くす』という場面でした。
看板には吹き出しもナレーションもないわけで、内心どんな葛藤を持っていようとも、世間に露出するアイドルはいつも笑顔で、魅力的であり続ける。
強調される看板はそういう、アイドルの外面と内面の乖離なんかも含んでいるのかなと感じています。

今回アーニャが見上げた看板は、常務が何度も肘鉄食らいつつ集めたPKのものです。
4つ開いた『COMING SOON』には楓さんと夏樹・星・松永が入る予定だったのでしょうが、それが流れた結果、アナスタシアの肖像がそこに飾られる可能性が生まれた。
見上げる視線はアーニャが持っている未知への期待とシンクロしているわけで、そこには必ずしも、ネガティブなイメージだけがあるわけではない。
そこら辺は、第17話で城ヶ崎姉妹が見つめたり、見上げたりしていた美嘉の広告と、似通った役割を担っていると思います。


不安と期待で足元が疎かになっているアーニャにぶつかってきたのは、PKメンバーである鷺沢文香と、大槻唯です。
彼女たちと語らうことでアーニャの不安と期待は大きく変化するのですが、積極的かつフレンドリーに話のきっかけを作る唯と、理知的で問題を言語化するのが得意な文香のコンビ打ちでシーンを作ったのは、なかなか面白い取り合わせです。
彼女たちのフレンドリーさは、会話の舞台になるソファを見てもわかります。
何かと間仕切りが挟まることが多いこの作品の椅子ですが、今回は壁になるものが何もない、フラットなソファが選ばれています。

そういう場所でアーニャが手に入れているのは、文香と唯への共感だけではなく、KP全体への共感のような気がします。
『敵』だと思っていた常務のプロジェクト、自分がこれから飛び込むかもしれない場所にはちゃんと顔のあるアイドルがいて、情熱がある。
新田さんがそうであったように(そして今アナスタシアがそうであるように)アイドルに興味が無いまま飛び込み、新しい何かに胸を躍らせる文香がいる。
仲間の意外な側面を見知って、どんどん仲良くなっていく唯がいる。
PKとCPは沢山似ている部分があって、自分たちが20話積み重ねてきたような物語を、そこに所属するアイドルたちはちゃんと持っている。
アナスタシアとPKのアイドルたちは、結構な部分おんなじである。
ソファで語らうことでアーニャは多分、そういう感慨を手に入れているし、それは少なからず視聴者も同じなのではないでしょうか。

唯がキャンディを手渡しているのも、PKとCPの共通点として面白いところです。
第8話で蘭子からプロデューサーに手渡されたマーブルチョコだとか、第11話で李衣菜と前川の間を行き来したキャンディと煮魚だとか、第18話できらり→プロデューサー→かな子&智恵理とバトンされたあめ玉だとか、この作品における食事は強い共感と安心のフェティッシュです。
唯が可食性のものを差し出し、アナスタシアがそれを受け取っているということは、アーニャの中でPKとCPがかなり接近したものとして受け止められ、共感可能な存在として認識されていることを、くっきりと示しているように思える。
アナスタシアの気持ち(と視聴者の気持ち)、お話全体の潮目が大きく移り変わるのに相応しい、説得力のあるシーンだと思います。

この流れを引き継いで、ホームであるCPでも挑戦の持つ意味が話題になります。
前川がどっしりと司会進行役をやってたり、照明が暖色系だったりするのが面白いシーンですね。
果敢にインタビュー仕事に食らいついた結果、CIは小日向のライブにゲスト出演(この時の衣装、各メンバーのフェティッシュが的確に配置された良い衣装だと思います)し、蘭子は第8話で毛嫌いしていたホラー路線の仕事を小梅と成功させている。
「挑戦するのは楽しいから」と笑顔で言い切る蘭子の言葉が、文香のそれとほぼ同じであるのは、CPとPKを重ねあわせる演出プランの延長でしょう。
自室に帰ってから再び星を『見上げ』、新田さんのアドレスを呼び出しては消すアーニャは、しかしまだまだ迷いの中にいます。


そういう迷いを一人で抱え込んでいるとろくな事にならないのは、第5-7話の前川&本田の暴走で学んだCPメンバー。
アーニャも素直にプロデューサーに話を持ちかけ、自分の気持を素直に告白します。
挑戦への憧れと不安、親愛なる新田美波がかつて抱いた気持ちを自分も持っていると、真っ直ぐ目を見て言葉にするわけです。
画面がカッチリ真ん中で分割され、光源が全て右側(プロデューサー側)に寄り、迷うシーンではモジモジするアーニャの足が映るという、デレマス演出を煮詰めて作ったような絵が面白ぇ。

アーニャの相談は、TPと凛ちゃんをどうするべきか悩むプロデューサーにとっても大きな意味を持っていて、このシーンはアーニャの言葉を受け取ることで自分がどうするべきなのか確認し、決断したシーンでもあると思います。
未知の可能性に飛び込み、一期のクライマックスである夏フェスを超える笑顔を手に入れること。
OPである"Shine!!"の歌詞を借りるなら、『新たなヒカリに会いに行』くこと。
一期で様々な辛苦を乗り越え一つの物語を完成させたアイドルたちが、二期で目指すのはそれであり、その背中を全力でサポートするのが、プロデューサーの責務であり、やりたいことでもある。

そういう発見が「笑顔になれる可能性を感じたなら、前に進んでほしい」という言葉になったのだと思います。
これが美城常務と対立した時、彼女が言っていた口説き文句とほぼ同じであるのは、まぁ偶然ではないと思います。
PKとCPが共感を持って重ね合わさる存在であるように、常務とプロデューサーも、不器用さと誠実さを共有する可能性の信奉者、アイドルを舞踏会に上げる魔法使いであると、ここの一致は言っていると、僕は思いたい。
その方が面白いし、僕常務の事好きなので、共通点を活かしてお互い心を開いていって欲しいのよね。(唐突なリバサ私的欲求ブッパ)


プロデューサーと決断を共有したアーニャは、ようやく新田さんに気持ちを伝えるべく、第8話で蘭子とプロデューサーが話し合った噴水に座ります。
やっぱここでも、二人を遮る間仕切りはない。
地下プロジェクト室での会話を立ち聞きしていた描写が入っているので、新田さんがアーニャの決断を共有していることは、視聴者には了解済みですしね。

「一人で決断することがなかった」というアーニャの言葉は作中人物としての実感であると同時に、個別エピソードを与えられず、『LOVE LAIKAの銀色の方』として作中に存在していたアーニャを知る視聴者の感想でもあります。
コンビをあえてバラバラにすることで、一期では描ききれなかった側面に光を当て掘り下げていくというテーマに関しては、第17話のみりあ&莉嘉、第18話のCI、第19話の*と共通する、二期らしいアプローチです。
新田さんは妹分の成長が嬉しい半面、CP最年長にして全体リーダーとして因果を飲み込まなきゃいけないという、複雑な表情してます。
第18話と同じく、どう考えても恋人同士の距離感だってのは言いっこなしです。
妹分、仲間仲間。(リバサ自己欺瞞ブッパ)

このシーンの暗示力は凄いことになっていて、満面のコスモスにてんとう虫、見上げる星と少女漫画力の高いフェティッシュが山盛りです。
色んな読み方が出来ますが、天道虫が空に向かって上がり続ける虫であることは、この後NGが同じ場所を共有した時は横に飛ぶトンボであることを考えても、LOVE LAIKAのポジティブな決断を象徴していると言い切っていいでしょう。
Ladybugだと幸運と愛の象徴か……飛んでった先がアーニャの新天地、PKだと良いなぁと僕は思います。
コスモスに関してはこれまでも何度かあった花の謎かけだと思いますが、花言葉が『調和』なので、より良い未来の暗示だと良いなぁ。
二人は同じ星を『見上げ』、期待を込めて明日に踏み出します。


以上、アナスタシアの物語を追いかけてみました。
第6話と同じように、NGが問題を拗らせる中でLLは現状を冷静に受け止め、より良い方向に進んでいくという展開でした。
同時に新田美波のリーダーシップが花開いた第12話の対になる、『LOVE LAIKAの銀色の方』ではないアナスタシア個人に切り込んだお話だったと思います。
描写を積み上げていった後気持ちを具体的な言葉にする演出のラインも第12話と共通で、至上とわかり易さが同居する、いい手筋だなと再確認しました。
ずっと何かを『見上げ』、新しい挑戦に希望を持って飛び込んでいくアナスタシアを、思わず応援したくなる話でしたね。

 

2)渋谷凛
第20話内部で綺麗にまとめていたLLに対し、NGは波乱含み。
これまでの仲間と新しい可能性の間で揺れる、渋谷凛の物語を追いかけてみましょう。

凛ちゃんもアーニャと同じく、常務に呼び出され、トライアドプリムス結成を打診されるところからお話が始まります。
第13話終盤で世界に登場し、二期では細かく描写を挟んできた、神谷奈緒と北条加蓮とのユニットです。
後輩としてNGを尊敬する彼女たちは、第3話のNGと明確に重ね合わされていて、凛ちゃんが憎からず思っている姿は、あの時の美嘉と被る。
入りたてのド新人を美嘉が抜擢したのは心躍る何かをNGに見たからで、TPの名前を出されて言葉に詰まる凛ちゃんもまた、同じ視線を二人に向けていることが分かります。

アーニャがPKにソロで飛び込むこと自体に期待しているのに対し、凛ちゃんはあくまで加蓮と奈緒という人物に引き込まれ、魅力を感じているように思える。
卯月の笑顔を決め手にアイドルに飛び込んだ第1話、夏フェスという天王山を経験してなおこころから楽しいと思いきれなかった第13話と重ねて考えると、渋谷凛は事象ではなく人間に引き寄せられる人格を持っているのでしょう。
卯月があくまでアイドルの外縁部に興味を持ち、CDを出して(もしくはTVに出て、コンサートをして)何をするのかという『アイドルの内部』に踏み込めないこととは、対照的なキャラクターだと言えます。

地下プロジェクト室での作戦会議では、戸惑いを表に出すアーニャに対し、未央に話を合わせる凛の姿が目立ちます。
凛ちゃんの迷いが本格化するのはTPと顔を突き合わせて話し、『Trancing Pulse』という具体的な可能性と出会ってから。
この段階ではアーニャほど、未知の可能性に期待と不安を抱いているわけではないのでしょう。
ここでも卯月が『頑張ります』言ってて、後の空虚な爆心地に繋がる蓄積をやってますね。


あくまで人対人の繋がりを求める凛ちゃんを揺さぶるには、直接顔を合わせるのが最も有効。
下校途中の凛ちゃんを捕まえ、ファーストフード店での話し合いに持ち込んだのは加蓮です。
奈緒は迷いがあるのか視線を下に向け気味ですが、加蓮は真っ直ぐ正面を向いて、グイグイ自分のやりたいことを伝えてくる。
このお話は心理的状況・社会的状況と身体表現が直結するルールを持っているので、迷いなく前を向いている加蓮は運命を開拓することに積極的で、そういう人間にこそアイドルの女神様が振り向くというのも、この作品のルールですね。
しかし奈緒、ハッピーセット注文は如何様あざとすぎるのではないか。
素晴らしい。

『今の自分にはNGがある。TP結成は出来ない』と拒絶する凛ちゃんに、加蓮は怯まず自分の気持を伝え、5時の再会を取り付けます。
これまでのエピソードの中で見えたTPの可能性は凛ちゃんにとって魅力的で、立場や状況を気にせず自分の手に入れたいものを素直に伝える加蓮の言葉に、凛ちゃんは思わず下を向いてしまう。
後輩のはずの加蓮が状況の主導権を握り続けるのは、彼女が持っている『病弱』という属性、リミットを意識せざるをえないからこそ迷いなく走りぬけ、ほしい物を手に入れる貪欲さ故なのかなぁ。
どっちにしても、このアニメで下を向かない奴は強い。

別れた後の階段のシーンは、奈緒と加蓮の間にある気持ちの温度差と、それが埋まっていく様子を視覚的に表した、デレアニらしいシーンだと言えます。
加蓮が階段を先に上がって、自分の中の真実に素直になる大切さを説き、奈緒がそれに追いついて一番高い場所に並ぶという演出は、二人の関係の変化を高低差で表していて、とても分かりやすいと思います。
あまりにグイグイ行く加蓮について行けなかった奈緒ですが、ここで加蓮の気持ちを知り、自分も同じ感情を抱いていると共感して追いつくことで、二人は対等な状態を手に入れ、水平な視線を共有することになります。
今後凄い勢いで悩んでいく凛ちゃんとは対照的に、奈緒と加蓮はお互いの気持が通じ合う理想的な状況にこの段階で到達しているわけです。
気負いがない素直なシーンなので、ローファーの踵は低いですね。


迷いのない二人に惹きつけられ、凛ちゃんはレッスン室にやって来ます。
二人の『Trancing Pulse』を聞いた凛ちゃんは第1話クライマックス、卯月の笑顔を見た時と同じ表情をする。
彼女をこの物語に引き込んだ運命の出会いと、ここでの出会いは同じ重さを持っているわけです。
曲名と同じ衝動を感じた凛ちゃんは思わず曲を口ずさみ、未来のトライアドプリムスは素晴らしいハーモニーを奏で始める。
重なった音楽は心からの笑顔を生み出し、顔は自ずから前を向き、レッスン室には初秋の夕暮れが満ちる。
全力で『TP結成は良いぞ!』というメッセージを伝えてくる、ポジティブなシーンです。

凛ちゃんが歌に入り込むと特別なことが起こることのは、第3話のレッスン室での描写。
内なる衝動が思わず歌になってしまうのは、第7話でアイドルと決別した後の自室での描写にそれぞれ繋がっている印象です。
このレッスン室での描写はこれまで積み上げてきた渋谷凛をフルに活用している感じがあって、『点』が『線』に、『線』が『面』になるような、立体感のある演出が活きていると感じました。

ここで凛ちゃんの自然な『笑顔』を見たことでプロデューサーは思い悩み、モヤモヤを抱えたままアーニャのストーリーに入っていきます。
彼にとって、アイドルの自然で最高の『笑顔』は最高の勝ちであり、しかし常務に可愛い凛ちゃんとアーニャを預けるのは不安で、自分が見つけて輝かせてきたというエゴイズムがないわけでもなく。
様々な矛盾がプロデューサーを惑わせている状態は、アーニャの相談を受けていく中で止揚され、彼は果たすべき使命と気持ちに気づいていく。
今回のお話は複数のキャラクターがお互いの物語に入り込み、影響を及ぼし合って変化していくというデレアニの基本構造を、より強調した造りになっていると思います。

 

3)New Generation
『とにかく実際にやってみて、そこで感じた印象を最優先に進んでいく』というレッスン室での描写は、渋谷凛がどうやってここまで来たのかを、整理する意味合いも持っています。
アイドルのことなど何も知らないけど、心を動かされた人物に片手を引いてもらって、とにかく飛び込んでみる。
そこで感じた心の動きや痛み、楽しさや辛さを正直に受け取って、前に前に進んでいくことで、アイドルとしての立場が後からついてくる。
心という自分に一番近い場所からアイドルを始めている凛ちゃんは、歌い、踊るという身体表現を通して初めて、自分が何をするのが良いのか直感できる性質を持っています。
そうである以上、周囲に配慮した『今の自分にはNGがある。TP結成は出来ない』という過去の気持ちは、実際に体験してしまったTPの楽しさと可能性には勝てないわけです。
自分の気持を感覚するのに身体表現を必要とするのは、つまり凛ちゃんがアイドル(アーティスト?)であるべき、大きな理由でしょう。

凛ちゃんの性質を浮かび上がらせることで、NGの他のメンバーの性質も見えてきます。
未央は人間と人間が組み合わさって出来上がる社会の、ちょうど繋ぎ目を重視している子です。
誰かがリーダー役をやらなければ状況が回らないから、そして自分が認められ褒められたいから、「リーダーだもんね」という言葉で自分を奮い立たせ、社会的要求と個人的欲求を巧くすり合わせようとする、コミュニケーション強者。
無論完璧には程遠くて、気持ちと立場のバランスが崩れると暴走してしまう癖があるのですが、それでも彼女の目線が個人と社会のバランス取りに置かれているのは事実でしょう。

対して卯月は、別け隔てのない優しさと、アイドルへの中身の無い憧れを持っています。
凛ちゃんのように自分の中から湧き出る衝動と、それを素直に受け止め優先する価値観があるわけでもない。
未央のように鋭い人間関係的視力を持っていて、困難な状況で何をするべきか即座に気づく感性があるわけでもない。
かつては無条件の優しさで凛ちゃんをアイドルの世界に引き込み、迷えるプロデューサーを立ち上がらせていた卯月ですが、この局面で強調されるのは、彼女の空疎さです。

これは今回初めて強調されたわけではなく、例えばとにかく頑張るしかなかった第1話の塩漬け状態であるとか、プロデューサーを立ち直らせつつもその実アイドルの外側しか語っていない第7話であるとか、あれだけの夏フェスを成し遂げておきながらアイドルの実感が無い第13話であるとか、一期の要所要所に埋め込まれてきた、大事な要素だと思います。
それを踏まえた上で、心を貫いた衝動に素直に、アイドルの内側に飛び込んで喜び手に入れてくる凛ちゃんの本性が今回描写されたことで、卯月の空疎さはこれまでにないほど際立った。
それは光が強く当たれば、影も濃く、長く伸びる現象に似ています。
第7話ではNGを飛び出した凛ちゃんが影、崩壊の危機を救った島村さんが光だったわけで、時間と状況の変化で立場が入れ替わることも、このアニメの基本ルールに則った流れでしょうか。

卯月の中身の無さはプロデューサーにとってもアキレス腱で、今回常務に煽られていた『自主性を尊重する』やり方は、アーニャのようにやりたい何かを突き詰めて考えたり、凛ちゃんのように迸る衝動が内から沸き上がってくるアイドルにはとても有効です。
しかし、笑顔という武器とアイドルという夢をしっかい持っているように見えても、突き詰めて考えていくとそこに自分の欲求が存在しない卯月の場合、引き出すべき夢が具体性を持っておらず、空転する恐れがある。
『アイドルのやりたいことを、やりたいように』というCPのスタイルは、『新しいことを思いつかない』卯月を掬い取れない可能性があると、今回の描写から見えてきました。
今回圧力がかかったのはアーニャと凛ちゃんなので、現状そこまで卯月は追い込まれていませんが、これまでの描写を見るにとことんまで煮込む問題なのは間違いがなく、そうなった時プロデューサーはどういう対応をするのか。
そういう所まで考えてしまうような照らし合わせが、今回の卯月と凛ちゃんの間にはあったと思います。


かつて加蓮と奈緒が上がりきった階段の途中で、NGではなくTPの曲を聞きながら立ちすくむ凛ちゃん。
『今、自分に出来ることを』という第15話でも掲げていたスローガンに従って、大量の本と映像素材を用意する未央。
そんな未央と自分を比べ、「新しいこと考えるの、苦手かも」と表情を曇らせる島村さん。
三者三様の在り方がもう一度映って、NewGenerationの修羅場が始まります。

『今の自分にはNGがある。TP結成は出来ない』というAパートの状況から、歌と踊りを経由して『TP結成は良いぞ!』となってしまった凛ちゃん。
その原動力になった実感はあくまで凛ちゃん個人のものですし、非常に身体的・内面的な言語化の難しい感覚です。
なので、結構頭で考えるタイプの本田には受け入れがたく、ガン曇りしながら反論していく。
「嫌だよ」と言葉にしてしまう本田の目線が、下方向で固定されっぱなしな辺りに、余裕の無さが伺えます。

新しい何かは、今ある満ち足りた状態のままでは不可能なのか。
これは第19話で、*の二人を襲った問題と同じです。
あのお話では李衣菜は前川との絆を選び、夏樹という新たなヒカリを諦める決断をしていました。(結果として自体はいい方向に転んで、夏樹とウサミンを取り込むことで、*のまま新しい可能性に辿り着いたわけですが)
対して、今回凛ちゃんはTPを選ぶ。
「私達じゃ駄目なの?」という本田の言葉に「分からない」と答える凛ちゃんは、しかしその前に「分からないけど、挑戦してみたい」という自分の気持を言ってしまっている以上、NGを否定してTPを肯定する決断、*とは反対方向の決断を既に果たしている。
凛ちゃんが自分の中の衝動/Pulseに従うカルマを背負っている以上、未央がどれだけ傷つこうが、自分の気持を明言することは避けても、否定はできないわけです。

凛との間にある亀裂が自分一人では解決不能だと気付いた未央は、卯月に話題を振ります。
「しまむーはどう思うの?」という問に、卯月は凛と同じく「分かりません」と答える。
言葉は同じでも背負っているカルマが違う以上、卯月にはほんとうに分からない。
いつものように『頑張ります』と答えないのは、この状況が頑張ってもどうにもならないことを察する程度には賢いからだし、もしかしたら、卯月は言うほど『頑張ります』を魔法の言葉と認識していないからかもしれません。
どれだけ『頑張って』も選ばれなかった第1話前夜は、いつも笑顔で明るい島村卯月の中で、未だ癒えていない傷なのかもなぁと、探しても探しても答えが見つからない彼女を見ながら思いました。


お互いの気持はすれ違い、視線も下を向いたまま一度も絡まない、閉塞した状況。
第6話でデビューライブが『失敗』した時の状況をなぞるように部屋を飛び出した未央ですが、あの時下っていた階段を今度は上り、闇の中に飛び込んでいった当時とは違い、光の方へと走っている。
あの時は立ちすくんだプロデューサーも、二度目の失敗はないとばかりにしゃにむに追いかけ、コスモスの咲く噴水前で話し合います。

美嘉が見守る中で、二人は何を話したんでしょうか。
ここは省略されている部分であり、今回は出した結論だけがドカンと投下される形なので、来週以降明らかになっていくとは思います。
しかし余計な推測をするだに、常務を敵視する姿勢を改め、常務の影響下でTPをはじめる凛ちゃんを認めるよう、話し合いを持ったのではないでしょうか。

未央は常務の路線に非常に好戦的で、ムードメーカーでありリーダーでもある彼女がオフェンシブに振る舞うことで、NG全体の空気が反乗務派に染まっていた部分があると思います。
一期で積み上げてきた順調な成長に横槍を刺されたのは事実ですし、常務の方法論がNGとは正反対なのも、彼女(たち)の反感を買う大きな要因でしょう。
結果、第15話では常務の行動を「そんな酷いこと」と形容し、李衣菜は自分たちを「レジスタンス」と呼び、今回未央は「こんなことで負けてらんない」と自分を奮いたたせる。
未央の世界の中で常務は『勝ち負け』をハッキリさせなければいけない『敵』であり、それが軍事的な言語選択に繋がっているのだと、僕は思います。
そして、その認識がTPの結成を『敵の軍門に下る』と認識させ、頑なな態度の一員になっているのではないか、とも。

並走するアーニャの物語の中で、プロデューサーはアーニャが気付いた世界を共有し、常務の行動に伴う正当性や、『敵』にも自分が担当するのと同じ『笑顔』のアイドルがいる事実に共感しました。
常務の行動への頑なな態度はプロデューサーも同じだったのですが、アイドルの間を走り回り、彼女たちを支えるという職務により、未央よりも先にアナスタシアの発見を共有出来ています。
第8話でプロデューサーと蘭子が、今回はLOVE LAIKAが、お互い歩み寄りより良い結論に踏み出すきっかけとなった場所で、未央とプロデューサーはそういう話をしたんじゃないかなぁと、僕は妄想しています。
少なくとも悪い結論じゃなかったはずだと思えるのは、エピソードを同じ場所で積み重ねることで、噴水前という場所に一種の聖性(もしくはジンクス。ここでは悪いことは起きないという信頼)が生まれてるからでしょうね。


もちろん、凛ちゃんの背中を押せない未央の気持ちは、常務への対抗心だけが生み出しているわけではない。
凸凹道を歩きながら絆を深め、夏フェスという舞台を成功させたNGへの信頼感。
振り回し振り回されながら、気持ちを繋いでいった親友たちへの愛情。
いかに人間関係の視野が広く立場を重視するとはいえ、彼女の行動を加速させるエンジンには、感情という燃料が絶対に必要です。

そして、プロデューサーはそういう未央の気持ちと経験にも、アナスタシアに対してそうしたように、誠実に、強く寄り添ったんじゃないでしょうか。
NGの導き手として、不器用な大人として、未央が気持ちを育むための時間を共有してきた彼は、未央の混乱した内面を受け止めるには、十分かつ適任な存在です。
過去の失敗に怯えていた第6-7話だったら不可能だったでしょうが、未央があの経験を経て成長したように、プロデューサーもまた、もうただの車輪ではない。
それは今回常務の提案に食ってかかり、アナスタシアに自分の気持を真っ直ぐ伝え、第18話では智恵理とかな子に強く禁止を言い渡した彼の姿を見れば、信頼を持って確信できる事実です。

三者三様、闇の中ベッドで迷う姿に第7話の描写をリフレインさせつつ、朝がやってきます。
『かつて大切だったものが、今は乱雑にベッドにおいてある』というモティーフチョイスは、第17話で莉嘉の台本が受けた扱いを、少し思い出させますね。
未央が決意を込めて、少し軽い調子を演じながら言ったソロデビューの中に、どういう感情が込められているのか。
それは来週以降のお話になりますが、不安と期待を感じさせるいいヒキだったと思います。

 

4)美城常務とProject Krone
CP側の主軸二本を見てきたわけですが、今回三本目の軸になっていたのは、ついにお目見えした常務側のアイドル、Project Kroneでしょう。
この物語がアイドルの物語である以上、アイドルを入れるハコたる346プロダクションや、裏方である常務やプロデューサーはあくまで遠景であって、主役はなんといってもアイドル。
常務の理念を具体的に背負い輝くアイドルたちは、僕が想像していたよりも朗らかで、楽しそうにアイドル活動していました。
仲良さそうにしている文香や唯を見てアーニャが感じた意外性は、多分視聴者のものでもあり、このギャップを出すためにこれまで、常務の描写は『悪役』とも『味方』とも取れない、微妙なものだったのかなと思いました。

常務が『いい人』である描写は、初登場となる第14話から既に見え隠れしていて、プロデューサーのネクタイを直したり、悪役っぽい登場と外見だけど妙に話の分かるヘンテコな存在として、彼女はこのアニメに現れました。
以来、例えば無印アイマスアニメの961社長や、プリティーリズムRLの法月仁のように分かりやすい悪事を働くでもなく、ゲスト・アイドルに圧力を加えたり、プロデューサーにキツい当たり方をしつつ、常務は自分の理念に基づいて行動してきました。
『美城の名前に相応しい、高貴な高嶺の花を集める』という行動理念には一分の理がありつつも、一期のプロデューサーを思わせる不器用さでそれをアイドルに押し付け、袖にされる描写が何回も続く。
しかし去るものに拘泥する様子もなく、考えを改めるでもなく、揺るがず自分の考えを進めていくというのが、これまでの常務の描写です。


CPのメンバーは一期でひと通りの試練を乗り越え、一つの到達点として夏フェスを終え、上がったり下がったりの物語的波風を、既に一回克服しています。
物語的燃料が少し少なくなった二期では、一期では取り上げられなかった要素や、一度は是としたポイントを別角度から掘り下げ、埋もれていた問題点に光を当てたりしつつ、プロジェクトを白紙に戻しCPを地下に追いやった常務を『敵』に設定することで、お話が回転していた部分がありました。
一度転がりきったCPの物語をもう一度動かす、いわば物語的梃子として機能するために、CPから見た常務が『敵』だという主観的な視線は、良く描写されてきた。
本田さんの好戦的態度は、その一環といえるでしょう。

その上で、CPからカメラを離し客観的な状況を切り取ってくるのも二期の特徴で、常務の行動に伴っている一分の理、CPが克服しきれていない弱点もまた、しっかり演出されてきた。
第18話でCPサイドの大きな武器になったバラエティ路線の良くない部分を、杏ときらりを通して描写したのは、その最たるものです。
今回見せられた常務側の魅力は、その実結構な確かさで、これまでの各話内部に埋め込まれていたと、僕は思っています。

その上で、このアニメはアイドルのアニメであり、アイドルではない常務に割く尺はそこまで大きくない。
結果、常務が何を考え、何を願って行動しているのかという、一番知りたい部分は踏み込みが足らない印象を受けてきました。
『悪人』『敵』として受け取るには客観性がそこかしこに転がっているし、『味方』とかんがえるには描写が足らない。
これまでの常務をまとめるなら、そういう状況だったと思います。


しかし今回、2つの点でこれまでのフォーマットを崩したことで、一気に常務が何を考え、何を願っているのか見えてきました。
一つは主役であるCPに直接圧力をかけてきたことです。
楓さんやウサミンや美嘉や夏樹といったゲスト・アイドルは、主役にとって大事な存在であることは間違いないにしても、あくまで部外者。
しかし今回、凛ちゃんとアーニャが的にかかったことで、常務のやり方がアイドルに決定権を渡すフェアなものであること、彼女が用意する出会いが新しい挑戦として価値が有るものだと、説得力と切迫感を持って伝わってきました。
部外者の手助けをしているだけでは見えてこない、当事者になってはじめて見える常務の顔が、今回ようやくクリアに見渡せたのです。

もう一つの変化は、常務のやり方がアイドルにどういう影響を及ぼすのか、はっきり見えたことです。
これまでも常務側のコマである周子・奏・フレドリカは画面に映っていました。
しかしそれはあくまで物言わぬ看板であり、彼女たちが実際何を考え、どういう気持で常務にプロデュースされていたのか、伝わっては来なかった。
第18話で内心グラグラと揺れていても、美嘉の看板は綺麗で遠い存在として街を彩っていたように、外部化されたアイドルをいくら見つめても、その内面は伝わってきません。

しかし今回、唯と文香がアーニャに接触してきたことで、血の通ったアイドルの姿が見えてきました。
彼女たちはプロジェクトの仲間としてお互いを尊重し合い、夢を持って新たな物事に挑戦し、楽しい毎日を笑顔で過ごしていました。
それはつまり、主人公であるCPと同じように、『笑顔』を大事にしながらアイドルをしている、ということです。
顔の見えない『敵』だったはずの常務のアイドルは、自分たちと同じように笑って泣いて喜んでしていそうな、素敵なアイドルだったという発見。
これはアーニャとプロデューサー(そしてもしかしたら本田さんと視聴者)の認識を改めるのに十分な発見です。
この落差を作る意味でも、常務の考えていることはよくわからないよう、ぼやかして描かれていたのではないかなと、僕は思いました。

加えて言うと、CPを出てPKに入る二人を敵対的な空気のまま送り出せば、一種の『裏切り者』になってしまいます。
『敵』と思っていた奴らの魅力をしっかり描いて、『敵は実は味方だった?』という疑問と実感を与えることで、アーニャと凛ちゃん(そしてもしかすると本田)への風当たりを弱め、軟着陸させる役割も、今回の交流にはあったと思います。
『相矛盾する要素の止揚』はデレアニにたくさんある基本哲学の一つですが、今回は『敵/味方』の対立が止揚されかかった、と言えるでしょう。


常務の主張に従えば画一的になりそうなKPのメンバーは、しかしCPに劣らぬ個性派揃いです。
テキトーな女高田純次、同じくテキトーな京娘、軽い調子の金髪ギャル、大人を強調する真面目な子供、キス魔を装う純情乙女、そして元書痴。
これに清潔感のあるロシア女子と、元病弱のイケイケと、太眉隠れヲタと、女子高生の概念存在が足されるわけで、とても常務の言いなりなお人形部隊とは思えません。
これまで全く喋らなかったKPメンバーが今回、自分の言葉と体温を持って動き出したことで、彼女たちの個性もまた、今後の物語の中で輝き出すのかなと期待してしまいます。
というか、あんだけ仲良しチームならPKの話もどんどん見たいよ!!

そしてそうなれば、常務もまた自分の頑なさについて考えなおさねばならないでしょう。
どれだけ押さえつけても、346に巣食う有象無象の個性は絶大で、ただ大人しく飾られているだけの偶像になってくれそうなメンバーは、PKにもCPにもいません。
というか文香の言葉を聞くだに、常務はそこまでアイドルに自分の考えを押し付けていないのかもな、とすら考えてしまいます。
どちらにしても、CPが大事に守ってきたそれぞれの個性はPKにもしっかりあって、それを輝かせるノウハウは常務よりプロデューサーのほうが、良く知っているでしょう。
今回プロデューサーが常務の持つ一分の理を知ったように、常務もまたプロデューサーの理念が有する利点を学んで、お互い認め合うようになる(というか、ならざるを得ない)んじゃないかというのが、今回の描写を見て思わず巡らした妄想です。
まぁ僕常務の事好きなので、対立してるより仲良くなったほうが嬉しいッて話なんですけどね。(再びの個人的嗜好ブッパ)

常務のアイドルが思いの外キラキラしていたことで、CPと常務は敵対というより並走可能なライバル的立ち位置なのではないかと、視聴者の中でも意識が変化したと思います。
先ほど例に出したプリリズRLで言えば、なるちゃんたちの願いを踏みにじり続けた法月ではなく、圧倒的な実力と熱い情熱を持ったジュネ様に近い位置に、常務はポジションしている。
となれば、哀しい宿命を背負って飛んでいたジュネ様をなるちゃんたちが救ったような展開もまた、今後あるんじゃないかなぁとか思いました。
無論プリリズRLとデレアニは全く別の作品ですので、同じ軌道をたどるとは限らんわけですけど、個人的な好みや希望も引っ括めて、あえて名前を出す感じです。

 

5)まとめ
新田美波の手から離れ、新しい挑戦と可能性に飛び込んだアーニャのお話。
TPの可能性に魅せられつつ、NGも大切にした凛ちゃんの迷い衝突したNGのお話。
顔と声を手に入れ、ぐっと短になった常務とPKのお話。
複数の物語が相互に影響を及ぼしつつ、次回以降の激変の準備を整えるエピソードでした。

二期は基本フォーマットを崩さないキャラエピソードが続き、正直少しの窮屈さみたいなものを感じていたので、このタイミングで大きく話を動かし、フォーマットから逸脱した展開を要してくれたのは、とても面白く、楽しいものでした。
ずーっと気にかけていた常務の腹の中、彼女が愛するアイドルたちの肖像もしっかり伝わってきて、あのひと好きな自分としては嬉しい限り。
ソロを宣言した本田の真意とは。
可能性に仲間を取られる形になったCPは、一体どんな変化を迎えるのか。
いろいろ気になるヒキもあって、クールの折り返しに相応しい、整ったお話だったと思います。
さー来週からどうなるのか、目が離せんぞ。